選択的夫婦別姓への反対意見として「戸籍制度が壊れる」といった声が多く聞かれるが、それに対して立憲民主党・米山隆一議員が冷静に反論しているポストが話題になっている。
米山隆一議員のポスト
解説
まず戸籍法6条について考えていく。
第六条 戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。ただし、日本人でない者(以下「外国人」という。)と婚姻をした者又は配偶者がない者について新たに戸籍を編製するときは、その者及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。
戸籍法 _ e-Gov 法令検索
戸籍は「一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごと」に作られる。米山議員の解説の通り、このままでも「子はどちらかの姓と同じであればいい」という解釈は可能だ。その解釈の中では、そもそもこの「夫婦」が同姓でなければならないということもない。選択的夫婦別姓の法律的な引っ掛かりはこれでもクリアされる。だがこれを「一の夫婦及びその何れか一方と氏を同じくする子ごと」とするのが自然だというのはその通りだ。
次にシステム的な問題について。戸籍は紙で管理しているわけではなくデータベース(DB)で管理されている。それによって戸籍謄本がコンビニで取れるようになっている。
戸籍の全部事項証明書には以下のものが書かれる。
- 本籍(住所のようなもの)
- 氏名(筆頭者の氏名、ここには姓が書かれる)
- 戸籍に記録されている者(1人目)
- 名(姓はここには書かれず、名前だけ)
- 生年月日
- 配偶者区分(夫か妻)
- 父
- 母
- 続柄(父母から見た関係、長男など)
- 身分事項 出生
- 出生日
- 出生地
- 届出日
- 届出人
- 身分事項 婚姻
- 婚姻日
- 配偶者氏名
- 従前戸籍(以前の本籍、以前の戸籍上の氏名)※結婚で姓が変わった場合は旧姓の氏名が書かれる
- 戸籍に記録されている者(2人目以降)
- 上記と同じ
この「戸籍に記録されている者」の中には本人の現在の姓を記録する枠が存在せず、自動的に筆頭者と同じ姓になる。現在の戸籍はこのフォーマットで形が決まっているが、令和7年5月26日からはこの戸籍にフリガナが追加される。フリガナを記録するための「枠」をデータベースやシステムに追加する必要があるが、選択的夫婦別姓となった際には各人の姓を個別に記載できるように、同様にシステムを改修すればいい。エクセルの列を追加すればいいというような非常にシンプルな話だ。(もちろんシステム上はそんなにシンプルではないのだろうが)
このように、選択的夫婦別姓になっても戸籍自体は本質的には変わらず、過去をさかのぼることや相続についても何も問題ない、というのが米山議員の主張だ。
法律的にも変更は容易で、データとして見た時も破壊的な変更はない。「選択的」というのが前提であり、これが実現したとしても多くの人は夫婦同姓を選択することが予想される。どれくらいの人が夫婦別姓を選ぶのかは分からないが、そのような選択肢があるということが大切だ。
一方で夫婦同姓である現在でも結婚後に旧姓使用ができる場面は多く、旧姓のまま活躍する会社員、研究者、国会議員なども多い。運転免許証やマイナンバーカードにも旧姓併記が可能であり、銀行口座を旧姓のまま保有できる場合もある。結婚をしても旧姓のまま生きていけると言っても過言ではない。選択的夫婦別姓が本当に必要なのか、旧姓使用の拡大という方向性で進めるほうがいいのではないか。というのは今回の本題とは別の話。